column 006:「良書」
この夏に出会った良書をご紹介します。
小泉武夫氏著の「食に知恵あり」(日経ビジネス文庫)。
とにかく味覚・嗅覚のイメージが刺激される1冊です。
酒造家に生まれ、農学博士の肩書きをお持ちの小泉氏は、醸造学の専門家であり・・・・世界中のあらゆる食べ物、特に発酵食品に並々ならぬ情熱をかたむけていらっしゃいます。
「食に知恵あり」目次の大見出しはといえば・・・
1食に歴史あり〜2五感を刺激する逸品たち〜3知恵は台所にあり〜
4ウソかホントか、幻の珍品〜5天使と悪魔の仕業、酔漢百態。
日常的な食材の素朴で美味しい食べ方はもちろん、世界各地の珍味・奇味の魅力に至るまで・・・・食文化を築いた人の叡知をたたえながらも軽快な語り口で紹介。パラリと本を開いたそのページからでも楽しく読めます。
小泉武夫氏、といえば数年前
「匂いの文化誌」(リブロポート)の著者の1人として知りました。
この本では、食文化に関わらず文化としての匂いについて著述され、日本人特有の匂い嗜好についても随分参考になりました。
民族の匂い嗜好の背景には必ず民族独特の食文化があることも改めて感じさせられたものです。
小泉氏の著書を良書とした理由は、面白くて役に立つ知識が得られるから、ということに加えて氏の”食への情熱”がひしひしと伝わる文章の魅力です。
「匂いの文化誌」の中では、香魚とよばれる鮎の独特の匂いの謎を鮎が食する川苔に求め、実際に清流で採取した川苔を食して納得するくだりなど・・・。
「食に知恵あり」の中では、著者が中学時代に名前を知り憧れたフォアグラを自分の手で飼育して食べてみようとするあたり・・・。好奇心を即行動に移し得られる感動が文面にあふれています。
もうすぐ秋。楽しい読書のひとときにおすすめします。
update:2003-09-15 / by Sawa Hirano